空気の向こうに見えるもの・・・。

2022年の3月と4月に、今の不安定な社会状態を作品化した2つの現代美術展を観てきました。展示画廊はハートフィールドギャラリーです。3月の展示作家は別所洋輝さんで、タイトルは「白い鳥を探して」。4月の展示作家は中谷ゆうこさんで、タイトルは「くうきのてざわり」。どちらの作品も、“観る私と作品との間に、もやのような白っぽい空気”が感じられたのです。

写真:中谷ゆうこ《hpa(ヘクトパスカル)空気のおもさ》

作家さんの話を聞くと、作品が表現したいことが分かるように思われましたが、私はそれだけではない何かを感じました。

別所洋輝《Looking for White bird》

別所洋輝《Looking for White bird》

「白い鳥を探して」

別所さんは「テーマやイメージから制作に入っていく」と言います。以前は“黒を基調として、キャンバスに油絵の具で細かく描き込んでいた”描画法が、だんだん変化してきて“白が基調”になったそうです。理由は、現在のテーマが“境目がはっきりしないこと”だから。技術面でもコットンキャンバスに「にかわ」をベースとして塗り、削ることでパステル調にしたりすると説明してくれました。

中谷ゆうこ《hpa(ヘクトパスカル)空気のおもさ》

「くうきのてざわり」

中谷さんは「描いていくうちに形の輪郭を失い、湧き出る空気のようなものだけが残った」と言います。コロナ禍で“祈ることくらいしかできなかった”ことを表現した作品は、手の形が輪郭を失って空気しか感じられないように見える。また、「コロナ禍では空気のありがたさに思いを深くした。観る方がこうした空気に共鳴してくれたら」と語ってくれました。「境目を失い、空気が漂っている」不安定さの中で、その先にある何かを表現しようというアーティストたちの意志が伝わってきました。

スタッフ/広瀬由利子(nickname:ゆりば)二世帯同居で、孫育て中です。

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